コラム
2026-01-08
③「名義を変えていなかった不動産」ケース
「昔の実家の土地だから、そのままにしていました」
「特に困っていなかったので…」
この言葉も、相続のご相談でとても多く聞きます。
2024年4月から、不動産登記は「義務」になりました
2024年4月から、相続によって取得した不動産については、
相続が発生したことを知ってから3年以内に名義変更(相続登記)をしないと、
過料が科される可能性があるという制度が始まっています。
この義務化を知って、「田舎の土地の名義がそのままだけど大丈夫だろうか」と
ご相談に来られた方がいました。
お父様が亡くなって20年以上経ってからの相談
ご相談に来られたのは、お父様が亡くなってから20年以上が経過したあとでした。
資料を見せていただくと、対象となった不動産はお祖父様名義の土地でした。
- 田んぼ
- 雑種地
- 筆数は多数
評価額としては合計で100万円前後。
一見すると「そこまで大変な相続には見えない」と感じる方も多いと思います。
問題は「時間」と「人数」でした
お祖父様が亡くなってから、すでに30年以上が経過していました。
お祖父様には子どもが8人。
そのうち5人はすでに亡くなっており、残る3人がご存命。
亡くなった5人については、その子ども(孫)が相続人になります。
結果として、相続人の数は合計20人になりました。
手続きは、ここから一気に複雑になります
この不動産を依頼者ご本人の名義にするためには、以下の手続きが必要になります。
- 相続人20人全員の戸籍謄本を取得
- 全員での遺産分割協議
- 遺産分割協議書に全員の署名・実印
- 全員の印鑑証明書
しかし、依頼者が連絡先も分からない相続人がほとんどでした。
人間関係と感情が、手続きを止める
依頼者の父が祖父の長男で、依頼者はその父の長男。
依頼者は不動産を一人で引き継ぎたいと考え、相続人に連絡を取り始めました。
やっと連絡が取れた中で、こんなことも起きました。
- 孫(依頼者のいとこ)のうち2人から「印鑑証明書を取るために会社を休むので3万円欲しい」と言われ、支払った
- 兄弟(依頼者の叔父)のうち1人は「あなたのお父さんと仲が悪かったから絶対に印鑑を押したくない」と拒否
- 別の1人(依頼者の叔母)は施設に入っており、認知症で成年後見人を立てる必要があったが、その息子さんが「そんな面倒なことはしたくない」と協力を拒否
結果、この相続は進まなくなりました
話し合いはまとまらず、任意での遺産分割は不可能に。
最終的に、この案件は調停手続きに進むことになりました。
評価額は高くない土地でも、時間が経てば経つほど、
- 相続人が増え
- 関係性が分からなくなり
- 感情が絡み
「進めたくても進められない相続」になってしまうのです。
もっと早く相談していただければ…
もし、
- お父様が亡くなったとき
- あるいは、義務化が始まる前
どこかのタイミングでご相談いただいていれば、
- 相続人が少ないうちに整理できた
- 調停まで進まずに済んだ
- 負担も時間も、ここまで大きくならなかった
可能性は十分にありました。
最後に
相続登記の義務化は、「今すぐ困っていない人」ほど影響を受けやすい制度です。
2024年4月以前に亡くなった方の名義変更は、2027年3月までに手続きが必要です。
特に、次のような方は要注意です。
- 昔の名義のままの土地
- 価値が低いからと放置している不動産
- 相続人が多くなりそうな家系
こうした心当たりがある方は、問題が大きくなる前に一度、状況を整理しておくことをおすすめします。
相続は、時間が経つほど選択肢が減っていくのです。
